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Opus 5.5 が 40 分で作った、子どもが計算問題にハマるゲーム
約 5 分の動画(中国語ナレーション)と記事。X(旧 Twitter)の動画を手本に、AI(Opus 5.5)に一文だけ伝えたところ、13 分で最初の版ができ、40 分足らずで子ども向け計算ゲーム「嗨算!」を個人サイトに公開できました。作っていった流れと、AI が自分の失敗にどう気づいたかを紹介します。あわせて、演出てんこ盛りの練習が子どもにとって良いのかどうかも考えます。
中国語ナレーション · 720p · 字幕(中国語) · MP4
記事:40 分足らずで、X の投稿を手本に AI に計算ゲームを作ってもらいました
「嗨算!」(ハイサン。「ノリノリ計算」くらいの意味です)は、子どもが計算を練習するためのウェブの小さなゲームです。1 桁正解するたびに、画面に花火が上がります。続けて正解すると、BGM がどんどん速く、高くなっていきます。ゲームの中の点数は「嗨值」(ハイ値。「ノリ度」のようなものです)と呼びます。単位は万から亿、さらに兆へと上がり、最後は ∞ になります。万・亿・兆はどれも中国語の大きな数の単位で、日本語の万・億・兆にあたります。

作ったきっかけは単純です。うちの子がいま使っている学習アプリは、十数年前の Flash ゲームのような見た目です。Flash ゲームとは、昔のウェブによくあった素朴な小さいゲームのことです。もっと今どきで楽しいものを子どもに渡したいと思い、この作業を AI に任せてみました。AI に最初のひとことを送ってから、ゲームを私の個人サイトに載せるまで、全部で 40 分かかりませんでした。

この記事では、まずこのゲームがどう作られていったのか、各ステップにどれくらい時間がかかったのかを書きます。次に、AI がどこでつまずき、それをどうやって自分で見つけたのかを紹介します。最後に、こうした演出てんこ盛りの練習が子どもにとって良いのか悪いのかを、保護者のみなさんと一緒に考えてみたいと思います。
1. きっかけは X の動画
このアイデアは私のオリジナルではありません。X(以前の Twitter)で、日本の方の作品を見かけたのが始まりです。アカウントは @grmchn4ai さんです。この方が 53 秒の動画で、AI を使って作った子ども向けの計算アプリを紹介していました。アプリの名前は「ドパドリル」(ドーパミンが出るドリル、という意味)です。ひらめきをくださった作者さんに、心から感謝しています。
元のアプリの遊び方はこうです。正解すると点数がもらえ、演出は 1 問ごとに派手になり、点数の単位もどんどん膨らんでいきます。満点を取ると、フィーバーモード(元のアプリでは EX)に入れます。画面全体がにぎやかで、うちの子が使っているような学習アプリとはまったくの別世界でした。
元のアプリは Opus 5.5 という AI モデルで作られていて、私の手元にもちょうど同じモデルがありました。私が使ったのは Claude Code というツールです。これを使うと、AI がパソコン上で直接ファイルを読み書きしたり、コマンドを実行したりできます。つまり AI はチャット欄にコードを貼って終わりではなく、自分で手を動かしてものを作ってくれるのです。
AI に伝えた要望は、たった一文です。その X の投稿のリンクを貼り、こう添えました。
ダウンロードして、この動画の内容をまねて、似たようなゲームを作って。
要件をまとめた資料も書かず、ラフスケッチも描きませんでした。この一文だけで AI がどこまでできるのか、見てみたかったのです。

2. 最初の版:13 分
この一文を送ったのは、2026 年 9 月 27 日の 14:49 です。AI が最初の版を出してきたのは 15:02 で、その間は 13 分でした。この版のコードはおよそ 750 行です。

AI が最初にしたのは、元のアプリを理解することでした。まず動画をダウンロードし、2 秒ごとに画面を切り出しました。そのスクリーンショットを 1 枚の大きな画像にまとめて眺め、そこから遊び方を読み取ったのです。人が誰かのゲームプレイを見ながら、ルールを覚えていくのとよく似ています。
最初の版は、ゲーム全体がたった 1 つの HTML ファイルでした。HTML はウェブページ用のファイル形式で、ブラウザで開けば中身が表示されます。なので、このゲームはインストール不要で、ブラウザで開くだけで遊べます。人に遊んでもらいたいときも、このファイルを 1 つ送るだけで済みます。

問題は筆算で出てきます。筆算とは、数字を縦にそろえて 1 桁ずつ計算するやり方で、小学校の教科書に出てくる書き方です。子どもは一度に 1 桁だけ入力すればよく、答え全体を一気に書く必要はありません。そのため、1 歩進むごとに正しいかどうかがすぐにわかります。
繰り上がりと繰り下がりも入っています。繰り上がりとは、足し算である桁が 10 になったとき、1 つ上の桁に 1 を足すことです。繰り上がりがあると、ゲームが上に小さな 1 を自動で書き込みます。繰り下がりとは、引き算である桁が引けないとき、1 つ上の桁から借りてくることです。借りられた桁には線が引かれ、横に新しい数が書かれます。

AI が自分の判断で変えたところもあります。元のアプリのキャラクターはネズミでしたが、AI は自分で描いたネコに差し替えました。WebAudio はブラウザに入っている音を出す仕組みで、コードから直接音を作れます。ゲームの効果音はすべてこれでその場で合成していて、音声ファイルは 1 つも使っていません。
点数は「嗨值」と呼び、単位は万、亿、兆とどんどん上がって、最後は「无量大数」(日本語の無量大数)に達します。フィーバーモードが終わると、点数はいっそ ∞ になります。
フィーバーモードに入る条件は、元のアプリより少しゆるくしました。元のアプリは全問正解が条件ですが、1 回目で正解できた割合が 80% 以上なら入れるように変えました。これなら、1 回まちがえても遊べます。フィーバーモードは 20 秒で、時間が来たら終わります。
3. 要望は一度にひとつだけ
最初の版が遊べるようになってから、要望を 1 つずつ足していきました。毎回 1 つのことだけを伝え、AI が作り終えて私が試してから、次を伝えます。こうすれば、何かおかしくなっても、どの段階で壊れたのかがわかります。ここから先は、すべて同じ日の午後の出来事です。
15:08、BGM を付けてもらいました。AI は C–Am–F–G の 4 小節をくり返す曲を作りました。演出がにぎやかになるほど楽器が増え、テンポも速くなります。
BPM は 1 分あたりの拍の数で、数字が大きいほどテンポが速くなります。15:11、今度は連続正解でスピードアップする仕組みを頼みました。子どもが続けて正解するたびに、BGM が 4 BPM 速くなり、半音高くなります。上がるのは最大 12 回で、ちょうど 1 オクターブです。1 問でもまちがえると、音楽はすぐ元に戻ります。
このとき AI は、ついでにいくつか付け足してくれました。子どもがキーを押すと、答えのマスに向かって光の線が飛びます。画面には連続正解の数が表示され、5 回連続で正解するとカードが光り、5 連続ごとに花火がひとしきり上がります。音楽がどんどん高くなっていき、1 回まちがえるとすべて元に戻る。これは、どんな注意書きよりも気になるものです。

次に、AI に 1 つ質問をしました。「足し算・引き算・かけ算・わり算って、4 年生で全部習い終わるの?」。AI は人教版の教科書に当たって確認してくれました。人教版とは人民教育出版社が出している教科書シリーズで、中国の多くの小学校で使われています。AI によると、整数の四則計算は 4 年生前期までに習い終わるそうです。
15:22、AI は学年モードを作りました。1 年生前期から 4 年生前期まで、全部で 7 つのモードです。1 年生前期から 2 年生後期までは横書きの暗算で、式を横に書いて頭の中で計算します。3 年生前期からは筆算に切り替わり、その先には 2 桁 × 2 桁のかけ算や、わる数が 2 桁のわり算もあります。

15:25、AI はゲームを私の個人サイト wtome.com に公開しました。中国語・英語・日本語の 3 種類の紹介ページも同時に公開です。14:49 に要望を出してからここまで、およそ 36 分でした。だから「40 分足らず」と言っているのです。

そのあと、もっと小さい子のことも思いつきました。16:01、AI は就学前モードを追加しました。絵を見てリンゴを数える問題や、絵を見て 10 以内の足し算・引き算をする問題があります。字が読めない子でも遊べます。これでモードは全部で 8 つ、ファイルはおよそ 1000 行になりました。
このゲームのコードはオープンソースで、MIT ライセンスで公開しています。オープンソースとは、コードを公開して、誰でも見たり、持っていって手を加えたりできるようにすることです。MIT はその中でもとてもゆるいルールの 1 つです。コードは github.com/DDnim/hisuan に、ゲームは wtome.com/play/hisuan にあり、開けばすぐに遊べます。
4. AI の 3 つの失敗
速く作れたからといって、問題がないわけではありません。このゲームは、作る途中で 3 回つまずきました。おもしろいのは、この 3 つの問題はどれも私が見つけたのではなく、AI が自分で見つけて、自分で直したことです。どうやって見つけたのかは次の節で書くとして、まずは何が起きたのかを見てみましょう。
1 つ目の失敗は、就学前モードで起きました。絵を見て足し算・引き算をする問題で、リンゴが小さすぎて、子どもがうまく数えられなかったのです。数を数え始めたばかりの子にとって、数えられないのは問題が解けないのと同じです。AI は絵を元の 1.5 倍に大きくしました。

2 つ目の失敗は、もう少し見つけにくいものでした。フィーバーモードの時間切れの瞬間に、ちょうど子どもが 1 問答え終わったとします。するとその問題が前のラウンドの成績に数えられ、画面に「正解 7/6」と表示されてしまいました。そのラウンドは全部で 6 問しかないのに、です。AI は、時間切れのあとは点数を数えないようにし、フィーバーモードも別に集計するように直しました。

3 つ目の失敗は、暗算の問題で起きました。暗算の問題では数字が 1 つずつ別のマスに入っていたので、「11 − 1」が 3 つの数に見えてしまったのです。大人なら意味を推測できますが、子どもは混乱しやすいところです。AI は、同じ数の数字をくっつけて並べるようにしました。

5. 自分で遊んで、自分で直す
この 3 つの問題を、AI は画面のないブラウザを使って見つけました。画面のないブラウザとは、ウィンドウが見えないブラウザのことです。ふつうにウェブページを開いたりボタンを押したりできますが、画面には何も表示されません。AI が使ったのは headless Chrome、つまり Chrome ブラウザのこのモードです。
AI はこれを使って、ゲームを最初から最後まで一通り遊びました。遊びながらスクリーンショットを撮り、あとでそれを見返して、おかしなところを探します。問題を見つけたらコードを直し、直したらもう一度遊んで確認します。

この経験で、AI がコードを書くことへの見方が変わりました。以前は、AI のすごさは書くのが速いことだと思っていました。でも今回いちばん助かったのは、テスト担当の人のように、自分で遊んで確かめてくれることでした。AI がコードを書くうえで大事なのは、速く書けることだけではなく、自分で遊び、自分で見て、自分で直せることです。
コードが書けない保護者にとって、これは特に大事なポイントです。コードが読めなくても、不具合を 1 つずつ自分で探さなくてもかまいません。何がほしいかをはっきり伝えれば、多くのチェックは AI が先に自分でやってくれます。もちろん、最後は子どもと一緒に実際に遊んでみるのがおすすめです。
6. 演出てんこ盛りは、子どもにとって良いのか
ゲームができてから、ずっと考えていることがあります。こんなににぎやかな練習は、本当に子どものためになるのでしょうか。子どもは計算を好きになったのでしょうか。それとも、花火を好きになっただけなのでしょうか。
ゲームデザインには juice という言葉があります。もともとは「ジュース」という意味で、ここではゲームに「味付け」をすることを指します。小さな操作の 1 つ 1 つに大げさな反応を付けて、ずっと押し続けたくなるようにするやり方です。よくあるのは、画面の揺れ、パーティクル(画面に飛び散る小さな光の粒)、効果音などです。この言い方は、2012 年の「Juice it or lose it」という講演が出どころです。嗨算!で 1 桁正解するたびに花火が上がるのは、まさに典型的な juice です。
点数が無限大まで上がり続けるのにも、元ネタがあります。放置系ゲームとは、ほとんど操作しなくても数字が勝手に増えていくタイプのゲームで、スマホのミニゲームによくあります。数字を膨らませ続けるのは、こうしたゲームが人を引きとめるためによく使う手法です。嗨值が万から ∞ まで上がるのも、この手法を使っています。

こうした手法はよく効きます。ただ、心理学には保護者に知っておいてほしい実験があります。1973 年、心理学者たちが、もともと絵を描くのが好きな幼稚園児たちを集めました。一部の子には前もって「描き終わったら賞状がもらえる」と伝え、実際にあとで賞状を渡しました。ところがその後の自由時間になると、この子たちはかえって絵を描かなくなったのです。
この現象は「過正当化効果」と呼ばれます。もともと楽しいことでも、外からのごほうびが強すぎると、子どもは「ごほうびのためにやっている」と感じるようになります。ごほうびがなくなると、もともとの楽しさまで一緒に消えてしまうのです。計算に置きかえると、子どもが花火や ∞ のためだけに問題を解いている場合、演出に飽きたとたんに興味も離れてしまうかもしれません。

だから私の考えはこうです。演出は役に立ちますが、置き場所が大事です。演出は入口のフックとして、子どもに「やってみよう」と思わせるのに向いています。子どもを本当に伸ばすのは、その先にある学習の仕組みです。フックは子どもを机に向かわせる役、仕組みは子どもに力をつけさせる役です。

学習の仕組みには、少なくとも次のようなものが必要だと思います。
- 学ぶ内容が順番に並んでいて、できるようになったら次に進める。
- まちがえた問題が数日後にもう一度出てきて、しっかり身につく。
- 子どもがどこでつまずいているかが保護者にわかり、どこで手を貸せばいいかがわかる。
この基準に照らすと、嗨算!はまだ前半しかできていません。嗨算!にあるのは今のところフックだけで、学習の仕組みはまだ作っていません。子どもが開いてみたくなる、もう少し解いてみたくなる、というところまではできました。でも、子どもがどこでまちがえたかを覚えておくことも、どこでつまずいているかを保護者に伝えることも、まだできません。

演出を外すつもりはありません。まだ計算を好きになっていない子にとっては、机に向かってくれること自体が貴重です。次に足すべきなのは、フックの先にある学習の仕組みです。そうして、演出を少しずつ脇役に下げていきたいと思っています。
7. おわりに
この 40 分足らずをふり返って、いちばん感じたのは、楽しいものを作るのはもう難しくない、ということです。一文と何回かの追加の要望だけで、AI は公開できるゲームを作り、しかも自分で遊んで自分で直してくれます。本当に難しいのは、子どもに本当に必要なものは何かを、しっかり考えることです。
保護者のみなさんの考えも、ぜひ聞かせてください。お子さんが今使っている学習アプリは、どんなものですか。演出てんこ盛りの練習は、子どもにとって良いことだと思いますか、それとも悪いことだと思いますか。よければ X で聞かせてください。
それから、作ってみたい小さなツールやゲームがあれば、X で教えてください。アイデアを寄せていただければ、私が形にします。

まず遊んでみたい方は wtome.com/play/hisuan からどうぞ。スマホでも PC のブラウザでも開けます。コードは MIT ライセンスで github.com/DDnim/hisuan に公開しています。
参考:
- 元の動画:x.com/grmchn4ai/status/2103807453406388538
- Lepper, Greene & Nisbett (1973), Journal of Personality and Social Psychology
- Jonasson & Purho, “Juice it or lose it” (2012)
- コード:github.com/DDnim/hisuan
- ゲーム:wtome.com/play/hisuan
ゲームの紹介ページ:嗨算!。元ネタは @grmchn4ai さんの「ドパドリル」です。あらためて作者さんに感謝します。